9月の法語「懐兎」は、月の別名であります。
「月が懐に兎を抱く」という意味になります。
日本には、月に兎が住むという伝承があります。
これは、仏教の説話集『ジャータカ』が発端であると言われています。
『ジャータカ』には、下記のような物語があります。
猿・狐・兎の3匹が、力尽きて倒れている老人に出会い、
老人を助けるために、猿は、木の実を集め、狐は川から魚を捕り、
老人に与えました。
兎は、何も採ることができず、猿と狐に頼み、火を焚いてもらい、
その火の中に飛び込んで、自分自身を食料として捧げようとしました。
この姿を見て、老人に扮していた帝釈天は、正体を現し、
兎の捨身の慈悲行を讃え、後世に伝えるために、
永久に月の中に兎を置いてあげました。
月の兎の周囲に、煙のようなものが見えるのは、
自分の身を焼いた煙と言われています。
また、兎が杵と臼を持っているのは、中国の神仙思想の影響で、
不老不死の薬の材料を杵と臼で打って、
粉にしているという伝承が日本に伝わりました。
しかし、日本では、不老不死の薬という思想はなかったので、
身近にあった、餅つきに変化したとされています。
9月12日は十五夜です。
慈悲深い兎を家族そろって、眺めてみませんか。
合掌